![]() | 「女性をつくりかえる」という思想 (明石ライブラリー132) 後藤 絵美 明石書店 2009-07-17 売り上げランキング : 396345 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中古原書の翻訳と新古論文集が多い明石ライブラリー。これも原書は1998年。パレスチナ系アメリカ人の編者の下にアメリカの中東ジェンダー研究者が結集したものらしいが、イスラームのエスニック背景があるのは半分くらいか。訳もチームで、同時期にカイロ・アメリカン大学に留学していた仲間だという。女4男1で、この辺にも海外組の「女性優位」が表れているのだが、帰国後も皆、まだ博士課程に滞留中の様で、この辺にも若手研究者の置かれている状況が表れている。だからとは言わないが、正直翻訳は読みにくい。ただでさえ、馴染みの無いテーマなのに、翻訳物550頁は結構苦行。エジプトが主で、それにイランを追加し、おまけにトルコといった構成だが、これが中東ジェンダーの研究事情をも表しているらしい。たしかに湾岸諸国はジェンダー研究不毛っぽいし、マグレブはフランスのジェンダー研究に内包されているのだろう。シリア、レバノンもそれに然りかと思うが、イスラエルを除外すれば、中東におけるフェミニズムの中心地と言えるのはエジプトであって、言語事情が異なるイランとトルコはそれぞれ自己完結的に女性問題と向き合っていると思われる。もっとも、このテキストが海外発である様に、「サバルタン」が発せない声を在外研究者や在外同胞が代弁している点は否定できず、そこに男性社会による女性支配という古くからの西欧によるイスラーム社会批判が介在する余地があるのだろう。エジプトで「おしん」が受容されたのも、非西欧圏による女性の物語だったからということがあるが、そこに非西欧モデルとしての日本モデルの称揚があったとみえる。中東の勘違い「日本女性幻想」は西欧女性へのアンチテーゼの意味もあるのだろう。その点、「ジャンヌ・ダルク」がエジプトでどう許容されたのかという考察は興味深いものだが、ジャンヌをイスラーム的価値観で置き換えるのも摩訶不思議な作業も行われたらしい。もっとも、日本が受容した西欧の物語も同じ作業を経ているものが少なくない事は今となっては知られている通りである。フェミニズムを西欧の思想と捉えるのなら「女性をつくりかえる」には脱イスラームの要素を含まずにいられないが、フェミニズムをイスラームにも内包するものとすれば、脱西欧がフェミニズムを意味することもある。女性に対する暴力などはその最たるものだろうが、これを伝統とする勢力をイスラームの名の下で追放できるか、フェミニズムの普遍性が試される。

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