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2009年06月06日Sat [14:10] アルジェリア | 本・雑誌 |感想  

アルジェリアを知るための62章

アルジェリアを知るための62章 (エリア・スタディーズ)アルジェリアを知るための62章 (エリア・スタディーズ)
私市 正年

明石書店 2009-05
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マグレブの大国アルジェリアの本が遂に登場だけど、やはり「知るための」か。チュニジアが出ればマグレブ揃い組みだけど、エジプトはなぜまだ出ないのか。日本でアルジェリア本があまり出なかったのは、行くのにビザが面倒、危険だった、在日アルジェリア人も少ないといいたところに理由が求められると思うが、この本の中でも私市正年が、20年前に学生が提出した卒論をみて仰天したというエピソードが載っている。それは55年から85年までの朝日新聞における中東報道の変化を分析したもので、驚いたのは60年代はアルジェリアに関する記事がトップであったということだそうだ。この世代の人間でない私でも「アルジェの戦い」が、「イージーライダー」とか「卒業」と並ぶ時代を象徴する映画と称されていることを了解しているのだが、当時のアルジェリアは後のベトナムや現在のパレスチナ同様に、「市民」レベルで「連帯」する対象であったことがよく分かる。独立後は失政という訳でもないのだろうが、社会主義化もイスラム化も中途半端で経済が破綻し、テロの温床、反政府運動弾圧といったお決まりのパターンを踏襲したが為に、遠い極東の「市民」はあれだけ熱をあげたアルジェリアのことをすっかり忘れてしまった。ベン・ベラなどはホーチミンとかゲバラと並び称されるヒーローだったのだが、まだ生きていることに驚く人も多いのではなかろうか。そんな日本とアルジェリアの関係は天然ガス関係で活発だった時期もあって、卒業生が語る日本人学校の記憶などは興味深い。ジダンを単なる「アルジェリア系」とだけ認識している人にも有用な情報が書いてある。カップヌードルのコマーシャルに出ていたジダンがイスラム教徒なのか、アラビア語を喋れるのかといった疑問自体がナンセンスなものなのであろう。「アルジェの戦い」でもアルジェリア人たちがイタリア語で喋るのを奇異に感じたのが、あれはフランス語にしてもアラビア語にしてもそれぞれ問題があったのかもしれない。イタリア語が中立的な言語であるかはどうかは別にして、独立後「正式アラビア語」を国の言語としたアルジェリアは言語の断絶という意味で台湾の戦後と似た様な問題を抱えたことが窺える。再び戦争でも起きない限り、アルジェリア本が爆発的に増える可能性も低いので、貴重な書物として所蔵しておきたい。

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