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オリエンタル・ジプシーオリエンタル・ジプシー
関口 義人

青土社 2008-07-24
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ほとんどライフワークとして各地のジプシーを訪ねる旅を続けている著者だが、遂に欧州外に突入。前作に引き続き「ラティーナ」の連載ものだという。シリア、レバノン、ヨルダン、トルコ、イランと来て、ギリシャ、イタリアに戻る構成だが、中東圏のジプシーについては日本でもあまり知られてはいない。私もイラク戦争のときに、サダム・フセインに弾圧されたジプシーの記事を読んで知ったくらいのものだったのだが、ジプシーがインドから来たにしても、エジプトから来たにしても、ヨーロッパへは中東経由ということになるから、その末裔が住んでいてもおかしくはないだろう。実際に最初に定住したのはイランとされているらしいのだが、現在、中東地域に住むジプシーの多くはルーマニアなどの東欧圏からの流入組なのだという。ホロコーストからの逃避もあったらしいが、中にはイスラエルに追われて「パレスチナ難民」となったジプシーもいるのだという。これも皮肉な話だが、現在、イスラエルのジプシー人口は不明とのこと。一番多いのはトルコで、ギリシャとの住民交換でトルコ側に来た者と、ギリシャ側に行った者がいるという。これは宗教的な理由によるものだろうか。中東であれば欧州の様に外見的特徴が目立つわけでもなく、「他者」として意識されることなく、暮らしているらしい。もっともそれが「差別」より厄介な「無関心」によるものであることも明らかになる。とにかく興味が尽きない話が多いのだが、相変わらず「取材」の実際を詳らかに書く人なのだが、本人の言うところの「研究者」でも「ジャーナリスト」でもないその姿勢は好感が持てる。「研究対象」とか「救済対象」としてジプシーをみる様な上からの視点ではなく、プロデューサーが「原石」を「発掘」する様な貪欲な視点は読者にとってジプシーを理解するというより、ジプシーを近しいものに感じさせられる。実際、著者はジプシーを心から理解したことはないとしているし、金に汚い人間に出会うと親しみを感じたりもしている。最初に幾つか文化的背景の解明に命題を絞っているのだが、だんだんとその当初の目論見から外れ、専門であるジプシー音楽に傾いてしまっている。その辺りも、またジプシー的というか、親しみを感じる部分ではある。

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