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この木鐸社というところは、前から気にはなっていたのだが、HP見ると、いい感じの老舗だった。こういう版元は世界遺産として保護しなくてはならないのだろうが、著者は一貫してその木鐸社からドイツ本を出し続けている人らしい。紀要で溜まったものをまとめている様だが、加工済みの二次文献に依拠せず、新聞や雑誌の報道を多用した実験的な論文とのこと。なるほど、伝統的な論文世界ではこういうのは実験的なものになるのか。移民国としてのドイツといえば、必然的にトルコ人問題ということになるが、最新の動きを追うには、やはり新聞、雑誌の報道が欠かせないかとは思う。ドイツにおける「スカーフ問題」は生徒ではなく教師の側から提議されたものであるのだが、それが移民のマジョリティであるトルコ人ではなく、アフガニスタン人女性だったということは、この問題を考える上でのポイントとなるのかもしれない。ドイツにおけるトルコ人社会の多様性については、よく知られるているクルド人の問題だけではなく、本国の政治状況を反映した極左から極右、穏健的イスラームから超保守、「イスラム過激派」、アタチュルクの国家主義者から、西欧型民主主義者まで多種多様なサブ・グループが存在し、ドイツのトルコ人社会を横断する様なコンセンサスは成立してないらしい。スカーフ問題についても、これを進歩の妨げと訴えるトルコ人女性活動家に対するアンチテーゼの意味合いがあったことも考える。いずれにしても、本国でスカーフが禁止される状況が存在しながら、ドイツでその不当性を訴えるというのは説得力を欠いたものではあろう。とはいえ、「ナチスの亡霊」が蠢くドイツでは、積極的な同化政策は取りにくい状況であることは確かで、トルコ人社会とドイツ社会が分離しているのは、多文化社会の功績というより、弊害である部分の方が大きい様だ。ドイツにはトルコ人のサッカー・クラブが全部で1,000以上もあるというのは、前にサッカー海外組を目指した人の本で読んだが、強豪国の例に漏れず、急速に他民族化したドイツ代表の中に、圧倒的に最大の移民集団であるトルコ系の選手を見出せない(もしかしたら、いるかもしれんが)のは不自然にも思える。トルコ協会がドイツで選手をスカウトし、多数を本国の代表に引っ張っているのは知っているが、その方面で、二重国籍化の成果が出るのはもうちょっと先になるのであろうか。


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