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2008年07月25日Fri [11:59] ロマ/ジプシー | 本・雑誌 |読書メモ  

ジプシー

ジプシー 歴史・社会・文化 (平凡社新書)ジプシー 歴史・社会・文化 (平凡社新書)
(2006/06/10)
水谷 驍

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新書ではたぶん初ではないかと思われるジプシー本。著者は長年、この問題をやってきた人で、ジプシー文献の翻訳者としても知られているのだが、元々は経済学畑の様だ。この本ではそうした一般向けのジプシー啓蒙書の役割を十分果たしているし、既習者にも、まとめとして重宝する内容となっている。学究肌らしく、ジプシーとの接触を繰り返すことにより、過剰な思い入れや勘違いをしてしまったり、ジプシーを被差別民として定義することにより、階級史観から抜け出せないといったこととは無縁で、文献を整理し、それを相対化してまとめるという、基本ともいうべき研究方法が功を奏している感じもした。「ジプシー」といえば、相対化しないことには収拾が付かなくなるほど多種多様なサブグループが存在し、「ジプシー」という名称一つとっても、自称、他称、蔑称、はては商標として捉える者がいたり、バラバラであり、著者が「ロマ」ではなく、「ジプシー」をタイトルとしたことについても、様々な議論の遡上にあって、これが一番妥当であると判断したからであるという。啓蒙でもなんでもなく趣味の過疎ブログである私は面倒くさいので併記にしているが、「ロマ」を使うなら「ロマニ」の方が妥当の様だ。ただ、日本では「ロマ」がP・Cになっているので、とりあえずこれで良いだろう。とにかくそうした様々な議論をまとめてくれるのは貴重であり、インド起源説にも様々なバリエーションがあることや、フィンランドのカーロとか珍しいものや、ジプシー人口の数値の不確かさや、DNAにおける白人性といったものは勉強になる。フラメンコとジプシーの関係についても詳しいのだが、昔、大学の授業で、その辺をスペイン人(カスティーリャ人)教師に尋ねたら、フラメンコは元々アンダルシアの伝統であって、ジプシーとは全然関係ないという驚くべき答えが返ってきたことがある。この本によると「フラメンコ」という言葉自体がジプシーを意味していたこともあったというが、その起源については、影響があったのは間違いがないが、議論があるとしているのは、著者もスペイン人から似た様なことを言われたことがあったのかもしれない。最後はサンカまで出しての、「日本とジプシー」。完璧な入門啓蒙書である。

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