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サウジアラビアを知るための65章 (エリア・スタディーズ 64)サウジアラビアを知るための65章 (エリア・スタディーズ 64)
(2007/07)
中村 覚

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いよいよ佳境に入ってきた「知るための」だが、石油の上に寝て暮らす富豪だけではなく、明石的な国の主人公である「人民」が存在するということで、サウジアラビア編が登場。しかし、どれだけ「意外」なところを知ることが出来るかということを評価の基準とすれば、これはかなり出来が良い一書でと言えよう。サウジの場合、国が閉ざされた部分と開放された部分のコントラストが激しいので、どうしても一面的な見方に終始してしまうものだが、こういう国こそオールラウンドである「知るための」の威力が発揮される。農業や自然については石油より多く章を割いており、この辺にも最近の「脱石油戦略」が他の湾岸諸国の様な商業主義的なものにならないところを窺わせる。そうした面はサウジのイズラーム金融事情などでも説明される。また、中東最大の「親米国家」でありながら、最大のテロリスト排出国であるというのも一面的な見方である訳だが、労働人口の半分以上を外国人が占めながら、サウジアラビア人の実質失業率は30%というのも意味深い。その労働事情も、官営セクターが中心で、公務員の平均的な労働時間が一日2時間というのでは、週刊新潮も真っ青ではなかろうか。そこにテロリストの芽が生まれると言えば話は早いが、それは働きたくても職がないからではなく、労働に価値感を置けないシステムになっているからであろう。しかし、分配社会がここまで発達すると、「世界で唯一成功した社会主義国家日本」同様、その分配システムが崩れる不安が国民を襲っているのかもしれない。その点、日本人が農民に戻れないのと同じく、サウジ人も遊牧民には戻れない(もっともサウジ人の多くは元々、定着民だったらしい)のだが、日本語弁論大会でサウジ人学生が披露したという「富士山と対話した」話は示唆に富む。サウジにはそれでも「神」という頼るべき存在があるのだ。果たして日本人は「砂漠」と対話することができるのだろうか。

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