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マーシャル諸島ハンドブック―小さな島国の文化・歴史・政治マーシャル諸島ハンドブック―小さな島国の文化・歴史・政治
(2007/11)
中原 聖乃、竹峰 誠一郎 他

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マーシャル諸島も遂に単体デビューかと思いきや、とんでもなく分厚い「マーシャル諸島核の歴史」という本が上下二巻で既に出ていた。やはりこの島に手を出すのはそっち方面の人たちの様で、この著者二人も「第五福竜丸平和協会」に属する「平和団体」の人たちらしい。思えば、パラオの非核憲法とか、南太平洋の「ヒバクシャ」といったテーマは80年代に大変盛り上げっていて、あのピースボート前科者議員とかも、その手のことをしていた記憶があるのだが、中国とか、印パとか、北朝鮮とかが、核実験だとか、核保有国だとかを宣言しているわりには、さっぱり盛り上がらない。それはなぜかというと、「冷戦が終了したから」という大変分かりやすり理由なのである。つまり社会が「右傾化」したからというのもある意味、正しいのであるが、結構、精神的に影響を受けていた80年代の反核運動は、ソ連とか北朝鮮とかが、工作したものだったということは、今や定説。北や中国の核に「平和団体」の抗議の矛先が向かわないのは今も昔も同じなのだけど、ビキニとかロンゲラップは、反米を目的とした反核運動にとって象徴的なものである。運動の先頭に立っていた人たちは、政治の手段が変われば、何事もなかったかの様に去るのみなのだが、幸か不幸か、その運動に意義を感じた若者は、現地に飛びこんで、現地の声を通わせることで、「運動」を生きたものにしようとする。とはいえ、マーシャル諸島は三里塚じゃあるまいし、若い衆がそう簡単に「参戦」できる場所ではないので、「調査」に入った少数の者は、核問題に限らす、その国の「専門家」としての役割を担う必要が出てくる。そこに過激化の余地はないのだが、どういう入り口にせよ、マーシャル諸島という国を紹介してくれるのはありがたい。昔、この国のパスポートを売り歩いていた中国人の知り合いがいたのだが、そのウリは、マーシャル諸島の国籍があれば、アメリカで自由に働けるというものであった。中国人にとっては魔法の杖みたいなものなのだが、当然安からぬ金額の「投資」が必要であった。おそらく、日本で日夜働いて、このルートで無事アメリカ入りした中国人も少なからずいるはずだが、この本を読む限り、「中国」を巡る事情はかなり複雑化している様子。南太平洋の国はどこでも「中国」問題があるのだが、スラムまであるというのはどうもピンとこない。「歩き方」が出てるのかどうか知らんが、とにかく、かなり親切なハンドブックなので、マーシャル諸島に行こうと思っている日本人(中国人より少ないだろうが)は必携である。

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