2017年05月02日Tue [05:04] ドイツ  

『新しき土』の真実

『新しき土』の真実: 戦前日本の映画輸出と狂乱の時代『新しき土』の真実: 戦前日本の映画輸出と狂乱の時代
瀬川 裕司

平凡社 2017-04-14
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散々論じられてきた作品ではあろうが、ここまで徹底検証すると、発見が色々。著者はひたすら批評と新聞記事を読むことから始めたそうだが、枕詞の様に作品に付いて廻っている日独防共協定や満洲開拓などは言われているほど関係がある訳ではなく、映画の本質としては現在と同じ「クール・ジャパン」戦略に近いものにあったのではないかと考察する。映画が低評価で、国辱とも言われたのも、伊丹万作と映画史上で稀な分作になったのも、そうした要因が関係しているのだが、巨匠という触れ込みの海外の監督が実は凡人であったというのは現在でもよくあること。ファンクが戦後ナチス視され、排斥されたというのも嘘みたいで、この作品も西ドイツで無毒化された上、戦後上映されているらしい。ファンクは妻子をドイツに帰した後、バーの女性を愛人とし、小杉勇に女優にする様に頼んだそうだが、豪華な暮らしが保証され、愛欲にふける毎日で、しまいには撮影にも姿を見せなくなったらしい。伊丹万作や熊谷久虎は明らかにファンクの才能や人間性に疑問を抱いていたのだろうが、熊谷も原節子もヨーロッパで長期間ただ浪費生活をしたという点ではファンクと変わらんか。自分も映画としてはファンク版の方が面白かった様な記憶があるのだが、やはり著者が言う通り、原節子が一番輝いていた映画であり、映画としての価値はそれだけで十分であったのだろう。

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