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2006年05月10日Wed [00:52] ドイツ | 本・雑誌 |読書メモ  

ドレスデンの落日と復活



この本は医師の著者がふとしたことがきっかけでドイツ人研究者と親交を結んだことから、そのドイツ人が住むドレスデンを何度か訪れるという話で、まあよくある旅行記といえばそれまでなのだが、この話は1980年代のことで、ドイツ人とは東ドイツ人。ドレスデンとは東ドイツの都市。つまり、もう訪れることができない国の旅行記なので興味深い。著者は1948年生まれというから団塊なのだけど、当時の東独と昭和30年代の日本を重ね合わせているのは面白い。その友人に東ドイツ人に外食の習慣がないと言われたことには、散々思い悩んだ様子で、日本でも昭和30年代は家族で外食するのはデパートのお好み食堂くらいで、寿司屋や割烹はオトナの男しか出入りしなかったと納得する。昭和30年代の事情は実体験がないのでよく分からないが、たしかに当時のラーメン屋とかそば屋なんかは「出前」のイメージがある。また、東独の外国人用ホテルには入ろうとしない友人についても、こどもの時、地元の高級ホテルは米軍専用で、そこに日本人が出入りしているのを不思議に感じたと思い出す。なるほど、やはり「発展途上国」時代の日本もそうだったのか。しかし、国境を超えれば全く別の世界という状況は冷戦終了後、なかなか体験しにくいのではなかろうか。香港と中国、アメリカとメキシコは段々格差が縮まっているし、セウタとモロッコとかパレスチナとイスラエルでも、かつての「鉄のカーテン」とはまた違う。著者はその旧東ドイツ人の友人のことをR氏と表記し、本名は伏せているが(顔出しはしている)、何かその辺に理由があるのだろうか。当時の東独で西側の外国人と親しく付き合う、それも東ドイツ人の方から、未知の著者にいきなり手紙を出すというのは、状況的にどうなんだろう。著者はそれを日本語を勉強することで、心の空洞を埋めていると額面通り受け止め、シュタージ関係はさらりと受け流すのだが、ちょっと気になる。まあ単にルンメルなんだらかんだら、とか長い名前だから省略しただけなのかもしれないが。

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