著者は印哲の人らしい。漢語系ではなく、残された古代インド系の文字の方からアプローチするのは、日本では結構珍しいのではなかろうか。はじめに「楼蘭王国」の存在について、その名称や、NHKのお陰で「定説」となってしまった王都の場所に疑問を呈するのも、日本人の憧憬を誘う井上靖とか司馬遼太郎の「騎馬民族史観」に対する違和感を表明したものに思える。まあその論考については、こちらに知識が欠けているので、何とも判断しようがないのだが、そうした「チョー昔」の話ばかりではなく、多少は興味を覚えるヘディンとかスタインのグレートゲーム時代の調査についても詳しいので助かった。そこでなるほどと思ったのは「楼蘭の美女」を「ヨーロッパ系」とすることで、自分たちの祖先の如く感情移入してしまう西欧の学者と、いやこれは「古代の中国少数民族」だという、これまた超無理がある中国の学者に対する著者の違和感。印哲の立場としては「いややっぱインドじゃないの?」といった感じの様だが、ここに大国の常である「インド中華思想」の塊のようなインド人学者が参戦したら、「楼蘭王国」を巡って、まさに21世紀のグレートゲームが始まってしまうのではないか。
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