世界読書旅
ここ数年に読んだ海外関連本の感想など
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■ アカディアンの過去と現在 
2008年05月03日 (土) 20:44 * 編集 *
アカディアンの過去と現在―知られざるフランス語系カナダ人アカディアンの過去と現在―知られざるフランス語系カナダ人
(2007/01)
市川 慎一

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フランス語系カナダ人については、その多くを占めるケベコワについてしか知る余地がなかったのだが、この本のテーマであるアカディアンは、それとは別系統のフランス語系とのこと。言わばフランス語系カナダ人の少数派といったところなのだが、ケベックの様に「領土」を有している訳ではなく、かつての「アカディア」はノヴァ・スコシアに存在していたのだが、英領になった後、フランス語系住民は追放され、カナダやアメリカ各地に離散。その後、帰還は叶ったものの、ケベックの様なフランス語文化の保持には至らず、英語化が進んだらしい。その中で、エスニック・リバイバルブームからアカディアンのアイデンティティを主張する人々が多く現れ始めているというのが最近の事情らしい。英語系カナダ人のみならず、ケベックのフランス語系カナダ人でもアカディアンのことを知らない人がいるなど、まさに「知られざるフランス語系カナダ人」なのだが、彩流社はたまにこうしたマイノリティーにスポットを当てた本を出してくる。著者は早稲田の仏文系の先生で慶應に出講し、このアカディアンをとりあげたとのことだが、早稲田からも、カナダ政府からも研究助成金を受けた研究を物語風にやさしく仕上げたとのこと。現在でもフランス海外自治体として残るサン=ピエール・エ・ミクロン島の訪問記などもあって、割と気軽に読める。「飛び地研究」などをしている人にはたまらない話が満載なのだが、言語系の人にとっても興味深いのでは。
# * カナダ * Comment (0) * Trackback (0) *
■ 幸福大国ブータン 
2008年05月03日 (土) 11:45 * 編集 *
幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔
(2007/10)
ドルジェ・ワンモ・ワンチュック

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副題が「王妃が語る桃源郷の素顔」となっているが、著者は正確には「元王妃」、2006年に退位した前国王には4人の妃がいたそうで、その一番年長の人らしいが、現国王の母ではない模様。冒頭のカラーページに、「婚礼の儀の王妃たち」という4人の王妃の写真が載っていて、五女、四女、著者、三女となっている。ということは著者は次女ということなんだろうけど、ん?「王妃」が姉妹?「王女」と勘違いかと思った。どうも、前国王は四姉妹を一気に嫁に貰った様で、それが慣習らしい。四人妻というと、イスラームが有名だが、一気に四姉妹と結婚するなんて話は聞いたことがない。昔、周潤發の映画で姉妹に惚れて二人と結婚する為にイスラームに改宗するなんてフザケタ映画(それを除けば映画自体は面白い)があったが、湾岸は知らんがブルネイ国王だって、嫁が古女房になってから、若いのを貰うというパターンだろう。しかし、日本でいまどき、六人姉妹なんて家はそうないと思うが、そういう家系は「縁起もの」として、お妃候補として四人ぐらいまとめて面倒みてもいいんじゃないかな。まあ、そんなことしたら「女性天皇」論者に怒鳴られそうだが。で、本の話に戻ると、「語る」となっているくらいだから、テープ起こしものなんだろう。ただ、著者には父の話をもとに家族の歴史を描いた前著があるらしい。そんな「語り」を原書の半分くらいと、佛教大学(京都のね)での文字通りの「語り」である講演記録を加えたもので、訳者は例によって今枝由郎だが、原書は仏語ではなく、当然ゾンカ語でもなく英語らしい。しかし、「お」とか「こ」が異様に読みにくいフォントを使っているのはなせだ。まあ王家の人の話だから、例のGNHに沿ったユートピアを語っているに過ぎないのだが、ネパールの王政廃止がいよいよ現実味を帯びてきた今、国内のネパール系の問題は、そんな悠長なことを言っていられない状況であることはたしかだろう。シッキムやチベットといった「兄弟国」が大国に併合されて久しいし、人民解放軍とインド軍の越境行為も続いているらしい。ネパールとチベットの状況次第では、ここで印中代理戦争が勃発する可能性もゼロではなかろう。その防波堤が「幸福パワー」というのも、如何にも頼りないのだが、さすがに「無防備宣言」みたいなアホなマネはしていない様で、著者の息子(元王子となるのか)も、両親の反対にも関わらず、国土防衛隊に志願したのだとさ。
# * ブータン * Comment (0) * Trackback (0) *
■ ナマスカール バーラット
2008年05月03日 (土) 01:40 * 編集 *
ナマスカール バーラットナマスカール バーラット
(2007/08/25)
宮地 敏子

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著者は国際幼児教育学会理事という、おエライさんっぽい人なのだが、これも新風の本。どうもインドに行ったのも「お仕事」ではなく、駐妻としてらしく、前半は使用人がどのこうの、お買い物がどうのこうのといった、ザ・駐妻的話。そのうち、デリーの大学で日本語を教えることになったらしく、インドの学生さんと、日本語劇「ねずみのよめいり」「ひろしまのピカ」などで奮闘する。こういうケースで童話を選ぶのは、それが著者の専門というより、外国語学習の王道なのかもしれない。ただ、川端康成とか大江健三郎の英訳本を読み込んでいる学生さんもいるらしいから、学生に覇気がなかったというのは、芝居など生まれて初めてするからという理由だけではない様な気がする。インドの日本語スピーチコンテストはレベルが高いという話を、前にどこかで読んだ記憶があるのだが、この著者の学生さんも一位、二位に入賞したという。面白いのは、発表者の名前を伏せて、題名だけ紹介するとのことで、これは名前で発表者のカーストが分かってしまうため、審査の公平を期す為だという。名前が分かると、どちらに有利に働くのかは不明だが、ミス・インディアとか微妙なコンテストでもそんなことが行われているのだろうか。一方、大学の学生名簿にはカーストの指定枠で入った生徒の符号が記してあるというのだから変な話だ。アファーマティブ・アクション枠の生徒はドロップ・アウト率が高いということも実しやかに言われているらしい。日本の大学でも一時流行したAO入試を効果が薄いと取りやめる動きが出ているそうだが、大学の教員も、そんな資料があると、成績評価に影響はないと言い切れないだろう。そんな感じでインドの現実を考えたりすることにより、定番の『深い河』の話とか、いろいろと精神世界にも入っていくのだが、最後は、これもお約束みたいだが、引越しトラブルで使用人の話に逆戻り。微妙に長すぎるし、駐妻話か、教育話かどっちかに絞った方がよさそうな気がした。まあ新風はそれどこではないから、本が完成してただけでも不幸中の幸いなのかもしれない。
# * インド * Comment (0) * Trackback (0) *
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