2013年04月19日Fri [00:40] マグレブ | 本・雑誌 |読書メモ  

植民地独立の起源

植民地独立の起源: フランスのチュニジア・モロッコ政策植民地独立の起源: フランスのチュニジア・モロッコ政策
池田 亮

法政大学出版局 2013-02-06
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博論もの。ロンドン大学提出というから原文は英語、ひょっとしたら仏語かもしれん。読みにくかったのはのはそのせいではなく、チュニジア・モロッコの独立過程という方面の知識を自分が欠いているからかと思うが、チュニジアとモロお子は一致団結してフランスから独立を求めたのではなく、モロッコに先に独立されることが、チュニジアのプライドを刺激したらしい。何でも後進国と見ていたリビアの独立が決まったことも大きかった様だが、そうなると、ジャスミン革命がチュニジアから始まったのも意外ではなく必然だったのかとも思える。安保理の関係もあるのだろうが、イギリスの役割に多く言及しているのは、論文提出先の関係かもしれない。ただ、イギリスとしては植民地独立は他人事ではないし、フランスと共同歩調を取りつつ新政権との関係を模索していた様だ。フランスは英連邦を参考にしていたみたいだが、著者が指摘している通り、独立はゴールではなく、スタートであるかたにして、新国家の財源をどう確保するかという点で、旧宗主国の影響力は担保される。もっと時代が下れば、東西冷戦があったり、今の時代だったら、国際機関が共同で援助するシステムが出来上がっていたりもするのだが、この時代だと、そういった選択肢はなく、急進的な革命でもない限り、温存された旧統治システムが現在まで続いているのである。

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2012年05月08日Tue [00:37] マグレブ | 本・雑誌 |読書メモ  

イトコたちの共和国

イトコたちの共和国――地中海社会の親族関係と女性の抑圧イトコたちの共和国――地中海社会の親族関係と女性の抑圧
ジェルメーヌ・ティヨン 宮治 美江子

みすず書房 2012-03-23
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原書は1966年らしい。著者はフランス人民族学者で2008年に101歳で亡くなったレジスタンス闘士。レジスタンスの生き残りは90歳代コンビが新著を出したりしているのだが、さすがに長生きの人が多いな。この著者はアルジェリ独立戦争にもコミットしたらしく、独立直後のアルジェリアに留学していたという訳者のあとがきはその辺の記述が多い。ただ、それは本題ではなく、マグレブに多いイトコ婚やら、女性抑圧問題。イトコ紺は地中海から日本まで多く見られるとのことだが、その媒介する視点が「野蛮」であるのは当時の時代の精神というより文化人類学的比喩か。韓国ではイトコ婚こそが日本が野蛮である証というのが今でも一般的認識なのだが、これが儒教の影響かと思いきや、本家の中国ではそれほど厳しくもなく、同姓不婚の拡大解釈で泣きを見ているのも皮肉なものである。中東のイトコ婚はもっぱら一族の事情によるものなのだが、日本でもかつてはそうだったにしても、結婚相手の自給自足が大半となった現在ではイトコ婚はかなり少なくなったのでは。先日観た「鰯雲」ではイトコを妊娠させて結婚するのが新世代の代表として出てきたのだが。ヴェール着用を女性抑圧と絡ませ旧風習の復活として批判しているのだが、この時代はそれが「進歩派」の一致した見方だったんだろうね。

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2012年03月17日Sat [00:09] マグレブ | 本・雑誌 |読書メモ  

クスクスの謎

クスクスの謎―人と人をつなげる粒パスタの魅力 (平凡社新書)クスクスの謎―人と人をつなげる粒パスタの魅力 (平凡社新書)
にむら じゅんこ

平凡社 2012-01-15
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貪欲に世界中の料理を食している日本において、クスクスが食べられず、かつそれほど知られてもいないというのは、まあ謎と言っても良かろう。その理由は日本と染みが無い国の料理だからという訳ではなく、日本が料理の最先進国と捉えているフランスやイタリアではかなりポピュラーな食べ物である。おそらくはその形状が米と近いことが違和感を与えているからだと思うが、クスクス寿司とかクスクス丼なんてメニューが出来れば、一気に日本食との融合が図れるのではないかといった気がしないでもない。そんなクスクスの多様ある世界をテーマにした初の新書かと思うが、一般的に考えられているクスクスの発祥の地は北アフリカという説にも異論を挟んでいる。サハラ以南説、インド説などがあるそうだが、食を含めた文化は上位から下位にという流れが危うい定説であることはもはや常識なのかもしれない。中東のアラブ諸国ではクスクスはマグレブ料理というエスニック料理の範疇にあるそうで、著者はこれを中東が北アフリカを下に見ている証左ではないかとしている。かつてはイベリア半島でもクスクスはポピュラーな食べ物であったのが、その痕跡が消えてしまったのもレコンキスタとの関係があるらしい。スペインでハムが国民食となり得たのも、豚肉を食すことが異端審問であったからなのか。

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2009年02月20日Fri [22:23] マグレブ | 本・雑誌 |読書感想  

マイクロクレジットの文化人類学

マイクロクレジットの文化人類学―中東・北アフリカにおける金融の民主化にむけてマイクロクレジットの文化人類学―中東・北アフリカにおける金融の民主化にむけて
鷹木 恵子

世界思想社 2008-01
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毎度クレクレじゃないけど、マイクレといえばグラミン銀行なのだが、別にムハマド・ユヌス先生が発明したものではなく、グラミンの発祥と同時期にラテンアメリカやアジアの幾つかの諸国で始められていたのだという。イスラーム圏でもその嚆矢は50年代のエジプトにもみられるらしいのだが、著者がフィールドワークの対象としたマグリブ諸国では、グラミンをお手本としたMCが主流になっているモロッコ、チュニジア、そのモデルとは全く異なるアルジェリアと分かれているらしい。この研究書はいみじくも「文化人類学」であるから、その違いがインフォーマントに対する膨大なインタビューに、著者が一つ一つコメントをつけていくという形で明らかにされていく。面白いのは、その対象がMC受給者に留まらず、MCを供与する側で働く人間にも及んでいるところで、単に「成功」「失敗」の両モデルを紹介しただけでは、MCの文化人類学的には相対的ではないということなのだろう。もっとも、高学歴で占められる供与側と、読み書きもおぼつかないケースが多い受給側の間に、それほど深刻な「格差」がある訳でもない様で、これらの国々での「高学歴ノーリタン」の問題は日本とはケタ違いといって差し支えないだろう。著者はマグリブで「ニート」が生まれつつあるのだろうかなどと控えめな表現をしているが、実際は国中ニートだらけと言った方が真相に近いのではなかろうか。「フリーター」にでもなれれば幸運な部類であり、高学歴であれば、見合った仕事が無いという事情で、就職に消極的になることが多い様だ。そんな中、逞しく生きているのが、MC受給者たる女性たちなのだが、それもインフォーマル・セクターという「市場」が存在するという前提があるからの話である。著者は日本に対する提言として、どの様に効率的にODAを供与するかといったところに論を絞っているのだが、現実問題としては、日本にMCの導入は可能かという議論を進めていくべきではなかろうか。もちろん、日本の場合、飲んだくれの宿六を抱える専業主婦に数万円を二十回払いで貸し付けたところで、何にもならないのだが、サラ金とか街金がやっていることはそれなのである。ニート対策としても、インフォーマル・セクターの再建という経済の「逆コース」はあっても良いのではなかろうか。

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北アフリカのイスラーム主義運動史
私市正年
白水社 (2004/11/25)
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タイトル通りのテーマを扱った貴重な本。ここでの北アフリカとはマグレブ三国を指す。周知の通り、この地域は世俗的傾向が強いのだが、その反動かイスラミニストの動きも活発化してきているらしい。アルカイダに多くのマグレブ出身者がいることは知られているが、マグレブの地場系イスラーム主義運動の多様性にも驚かせる。これも部族社会の歴史と関連づけられようが、やはり、三国に共通する権威体制(社会主義、西洋型世俗主義、王制)とイスラーム主義の矛盾が噴き出した結果とも言えよう。或は権威体制の失敗によって、最後の希望としてイスラームへの帰依が進んだと説明するのがより事実に近いだろう。イスラームを体制に取り込むことに懸命である一方、体制を脅かしかねないイスラーム主義は弾圧するというのは三国共通であるが、アルジェリアやモロッコで膨張したイスラーム主義運動に血の弾圧が行われたのに対し、チュニジアの特殊性が際立つ。この国は一夫一妻制が法的に定めらているなど、徹底的な西洋型世俗主義を採用している事が知られているが、ブルギバがラマダーン時にテレビカメラの前でジュースを飲んでみせ、断食を無意味だと言ったというのも驚きだ。後にPLO本部を受け入れたのも、西洋型世俗主義体制への批判をかわすためだったらしい。またこの地域に特徴的なのはマルキシズムが大きな力を持っており、国民国家の枠組みで、イスラミニストに直接対峙するのはマルキストだというのも、西欧とアラブの思想のせめぎ合いを感じる。ベルベルの例を出すまでもなく、マグレブにおける「アラブ化」は未だ進行途中とも言えそうだ。独立運動の過程で受け入れられたマルクス主義に裏切られた結果がイスラーム主義への回帰なら、最近芽生えてきているラジカルなイスラーム主義運動への失望は、伝統的なスーフィズムへの回帰をもたらすのであろうか。

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2005年06月11日Sat [21:44] マグレブ  

マグレブ複数文化のトポス

4791761340マグレブ 複数文化のトポス―ハティビ評論集
アブデルケビール ハティビ Abdelk´ebir Khatibi 沢田 直 福田 育弘

青土社 2004-07
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著者はモロッコ出身のフランス現代思想家。当然、難解。フランスの現代思想界では大物らしく、デリダ批判を堂々と展開したりもしている。モロッコ人が何故フランス語で書かなくてはならないかといった「マグレブ人の悲哀」なども論じているが、この様なマグレブ知識人は現在でも、フランス語で考え、書く事が普通である。

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