食の図書館シリーズも底なし沼の様に出るので、もう全部付き合うのは止めたのだが、土地勘があるものだけは触っておく。とはいえ、酒はしばらく飲んでいない。ラム酒は若い時分に飲んだ酒であるが、甘酸っぱい思い出があるという訳でもない。日本の酒の位置付けで言えば焼酎であろう。ロンロンロン・ハマイカ・ロンのCM音楽が今でも頭にリピートするのだが、元々、スペイン領ではなくイギリス領の島で始まった酒なのか。サトウキビの栽培地で作られたのは間違いが、未だにその原産地は論議があるらしい。

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国本伊代も違うし、カリブ・プロパーという人はあまりいないんだな。カリブ・スタディーズという世界が多層的であるという理由もあろうが、需要の問題もあるか。キューバやジャマイカなどは単体で扱えるが、こうした一つの「世界」で俯瞰させて貰えるのは有り難い。国マニア的にはたまらんところだが、あんな小さな島々がバラバラに独立していたり、していなかったりというのは単純に帝国主義の落とし子だからという訳でもなく、連邦国家を模索していたのに、ジャマイカが一抜けし、トリニダード・トバゴが二抜け、残りを支えられなくなったバルバドスが抜け、もうみんな勝手にやってという事情らしい。それでも通貨とか大学や航空などは別々に作ってはもたないので、一緒なのだが、西インド諸島大学受験事情などはかなりレアな情報である。パピアメント語はヤクルトのバレンティン選手で知られる様になったが、この言葉が生き残ったのはオランダ語が使えない言語だからとしてしまっては身も蓋もない。まあ日本人もさっさとオランダ語を捨ててしまったのだから、同じ身の内ではあるのだが。




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ハイパーメディアクリエイターではなく、職業作家になったのか。一番通りが良いのは沢尻エリカの元夫だろうが、マイル生活者なのかな。実際にこの島全部に行ったのかどうかは分からんが、元ネタはアトラスっぽい。カリブとかマイナーな島からはクレームはこないだろうが、好きな様に書いているので、別の島の観光局などからクレームが絶えないのだという。このシリーズ全部読んでいる訳ではないが、これを読む限り、一般的なことしか書いていないし、何が問題視されているのかよく分からん。タックス・ヘイブンの島から脅迫されるとも思っているのだろうか。

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沈没船の発掘がアメリカでは男のロマンみたいものになっていることは戦艦武蔵とかタイタニックの件でも浮き彫りになっているのだが、そうした「道楽」に全く魅力を感じない者にはこの物語のウリである「海賊船ハンター」たちの個性自体に違和感を覚えさせられる。川口探検隊でも椎名誠の怪しい探検隊でもそうだが、好きな人は好きだが、あの身内盛り上がりが嫌だという人は全く受け付けない。マフィアの用心棒やってた中年男がドミニカ共和国の海軍参謀長の娘と恋に落ちて、ドミ共海域での沈没海賊船のお宝探しの許可を得るとかいう流れはロマンというか私物化じゃねえのかと思ってしまう。海賊時代へのフィードバックもあるのだが、アメ本はとにかく長いので困る。食い物でも何でも、デカけりゃ良いってもんじゃなかろうが、このくらいないと、本を買うのは損だということになっちゃうのかな。疲れたよ。

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![]() | 渡りの文学: カリブ海のフランス語作家、マリーズ・コンデを読む 大辻 都 法政大学出版局 2013-12-06 売り上げランキング : 615427 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
博論もの。マリーズ・コンデという人は知らなかったが、グアドループ出身の仏語作家で、邦訳も何冊か出ているようだ。この地域の「知識人」にとって、フランス体験、アフリカ体験、アメリカ体験というのは通過儀礼の様なものだが、そのいずれも経験し、故郷に帰還した現役作家とのこと。グアドループはマルティニクよりハイブリット性が高く作品にも多人種が登場するらしい。クレオール語ではなく、フランス語で書き続けるのもそれが教育言語であることと、市場の問題もあろうが、特にクレオール性にアイデンティティを求めてはいないからであろう。対峙すべき対象をどこに置くかはカリブ文学の命題なのかもしれんが、そうした傾向文学がいつまでもも求められている訳ではなさそうだ。


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![]() | カリブ-世界論: 植民地主義に抗う複数の場所と歴史 中村 隆之 人文書院 2013-08-10 売り上げランキング : 424667 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
博論ものならぬ第二の博論とのこと。フランス海外領カリブというか海外県をテーマにしたもののテキストは少ないので勉強になった。とは言っても、マルティニックとグアドループの違いを即答できるほどとまではいっていないのだが、両島の近似性については了解した。独立派がほとんど力を持たないのも、ハイチという反面教師を目の当たりにしていることもあろうが、その失業率が若年層では50%にも達するというのだから、労働構造的にはハイチと変わらないレベルなのかもしれない。バナナのモノカルチャーに観光だけという経済構造も然りなのだが、フランスの一部であり、EUの一部であるという現実がハイチと生活水準の格段の違いをつけている要因であることは誰しもが分かることなのだろう。その歴史上初めてのストライキは日本人労働者によるものだったそうだが、当然現地労働者の指示などは得られず、むしろ粉砕されてしまったらしい。



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![]() | スラムの生活環境改善運動の可能性―カリブ海地域の貧困とグローバリズム 江口 信清 明石書店 2008-04 売り上げランキング : 1115678 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
タイトルは平々凡々なのだが、この研究対象の「スラム」はフィリピンとかインドとかブラジルといった「メジャー・スラム」ではなく、ドミニカ、ガイアナ、トリニダード。ドミ共本でさえ数少ないのに、こちらはドミ国だ。これぞ研究界のニッチだが、著者は毎年の様にドミ国の調査に出かけているという。全くうらやましい。ドミ国の人口は約7万ということで、首都のロゾーも田舎町だと思うのだが、「不法占拠地」という形でスラムが形成されているという。ジャマイカとかハイチみたいにそれなりの人口と都市を抱えていれば、そうした問題も表沙汰になるのだが、この辺の小島国は独立していても、旧宗主国の恩恵がまだ何がしかあって、人口も少ないから土地も余って、まあまあの生活水準かと勝手に思っていた。所得水準では「中進国」と位置づけられているらしいが、実際には「小さなジャマイカ」みたいなものだろう。石油があってインド人がいるトリニダードや、ガイアナでは商業基盤がしっかりしてそうだが、貧困やスラムはそれに伴うものであろう。ガイアナで犯罪が多発していることも裏付けられてしまったが、人種的要因というのは、やはりあるのだろうか。その点、ドミ国のカリブ人の存在も気になるのだ、ここでは言及が無い。著者がドミ国の社会的発展を阻害している理由に宗教を挙げていることは興味深い。衣食住足りて、金銭的余裕がある者たちが道楽として宗教をやるのは結構だが、そうでない者を宗教心で縛り付けるのは搾取であろう。宗教団体が海外に出て貧困層を対象としたボランティアをやるのも免罪符に過ぎないのだが、その詭弁も批判されている。「怠惰」という概念も、その実、キリスト教がもたらしたものではなかろうか。神ではなくて、現実と向き合わなくてはならない。


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カリブ諸国文学を国順に、一作家一作品を取り上げ、解説した評論集。取り上げられているのは英語作家のみである。それはカリブ諸国の多くが旧英領である事や、編者の専門がアフリカ系アメリカ文学である事も関係しているのだが、大いに関係していると思われるのが、ここに登場している作家のほぼ全員がアメリカ(一部イギリス)に生活の基盤を置いている事。それはキューバ、ドミニカ共和国、ハイチといった非英語圏の作家も例外ではなく、一様に英語作家である。カリブ諸国に大国は存在せず、職業選択の自由はあっても、選択の幅は狭いのが現状だ。作家という職業を成り立たせるには、当然ながら、国外に発表の場を持たなくてはならない訳で、ここにカリブをモチーフとしたある種の「郷愁文学」といった作品群が国外で生まれる。こうした土着文学ではなく、ディアスポラ文学でもないのがカリブ文学の特徴といえば大雑把であろうが、ドミニカなどの一部を除けば、先住民がほぼ死に絶え、黒人、白人、インド人、そしてクレオールなど、ルーツを他所に持つ住民で構成されるカリブ諸国では「郷愁」もまた、作られなくてはならないものなのであろう。

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世界思想社 (2004/04)
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一口にカリブ文学といっても、書かれている言語は英仏など欧州系もクレオールもあり、作家もアフリカ系、混血他様々で、この地域出身で一番有名なのはインド系のナイポールだったりする。この様に「入門編」である本書は、硬直な「文学論」を避け、カリブの文学シーンを色々な角度から紹介してくれる。文学という限定されたジャンルだけを切り口にカリブ諸国の社会、政治、宗教、人種、歴史など色々な問題にアクセス出来る優れモノ本。
☆☆☆
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