世界読書旅
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■ イスタンブール 
2008年05月28日 (水) 13:06 * 編集 *
イスタンブール―思い出とこの町イスタンブール―思い出とこの町
(2007/07)
オルハン・パムク

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ノーベル賞というヤツも、栄作とか大中とかゴアが獲ったりして(中国に言わせればダライ・ラマなんかもそうだろう)政治的意味合いが濃いものなのだが、文学賞もまた、英米語とせいぜい仏独西といったメジャー言語を基本としながら、たまに「特殊言語」に振って、国際的価値を保つなんてことをしている(中国に言わせれば高行健の受賞は政治的なんだろうが)。てなことで、2006年の受賞者がこの著者なのだが、アルメニア人虐殺問題で、トルコ政府から国家侮辱罪で訴追されている人だから、それが政治的意味合いがなかったともいえない。その点では、沖縄戦を巡る大江健三郎も似た構図もあるし、イスラム圏ではエジプト文豪の受賞者も、「イスラム過激派」から攻撃されたこともあった。ホメイニから死刑判決を受けたあの人は、さすがに受賞してないけど、「第三世界」からノーベル賞をとるには、「野蛮」な祖国と闘う必要があるのだろう。となると青色ダイオードの人とかも可能性があるのかもしれんが、逆に理系が米国系研究者で占められるのも、専攻が純粋学問に徹している証左になるのかもしれない。で、この著者の文学的業績などは全く知らないし、小説を読む気にもならないので、自伝的エッセイらしいこの本に挑戦。しかし、470ページもあって、時間を浪費してしまったという感は否めない。有名写真家のレトロな写真とセットになっているのだが、著者がイスタンブールでの若き日を振り返るというテーマである以上、やはりポイントは「喪失感」。もうこれで村上春樹の受賞は数年ないことが決定的なのだが、洋の東西、人種、イデオロギー、宗教を越える都会人の普遍的なテーマはこれしかないんかいなとも思ってしまう。著者がイスラーム性というものをほとんど排除して、まるで「パリ」の様な生活観を滲ませるのも、それが本人にとって自然なことだからであろう。当然ながら、そこに「性」の悩みも出てくる訳だが、パリの青年と同じ様に自慰もするし、セックスもする。村上春樹がそいいう読まれ方をしているのかどうか知らんが、「西」の人にとって、「東」の人の「性描写」は、それだけで文学の「枷」を外すことになり、興奮するものなのかもしれない。青年時代の著者の自意識は「西」にあったことは間違いないが、最後に母との間で起こる「東西対立」は文字通り、東でも西でもないイスタンブールという地を象徴しているともいえよう。それが著者の喪失した「東」とするならば、「西」が喪失した「東」に賞を授与するのは、「西」の勝利なのか、「東」の勝利なのかよく分からないところだ。
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■ テュルク族の世界 
2008年03月23日 (日) 01:14 * 編集 *
テュルク族の世界―シベリアからイスタンブールまで (ユーラシア・ブックレット No. 114)テュルク族の世界―シベリアからイスタンブールまで (ユーラシア・ブックレット No. 114)
(2007/10)
廣瀬 徹也

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ユーラシア研究所の「ユーラシア・ブックレット」第114号。今年新装した近所の図書館は、このシリーズをどうも飛び飛びに購入している様だが、リクエストがあるとも思えないので、貸出し成績でも計って、全巻揃えるか検討しているのだろうか。それなら借りまくってあげるんだけど、このサイズなら、ジュンク堂でも余裕で立ち読みできるから、まあいいか。ということで、この本も62ページで終了なのだが、「シベリアからイスタンブールまで」という副題に偽りのないどころか、ウラル山脈以東の草原地帯におけるテュルク族の原郷から、現在にまで至るトルコ共和国からNIS諸国の歴史、政治、経済、文化全て押し込んでしまっているから恐ろしい。これをまとめたのは元外務省「トルコ・スクール」の人で、苦学した人の様だ。キャリかノンキャリかは知らぬが、退官前にアゼルバイジャン大使に昇任してあがりとなった人らしい。その点は「大使もの」の系譜に入るのだが、紙幅を考えてか、個人的な話はほとんどなく、淡々と自分の仕事=トルコ世界の啓蒙をこなしている。トルコをテュルクと表記するのは、親トルコというより、反トルコ共和国のスタンスをとる人に多いのだが、テュルクとはトルコ共和国と区別する為と、わざわざ断っているのも、そうした点が念頭にあるのかもしれない。「トルコ」は風俗関係者も白旗を上げた伝統的日本語表記であるから、「ビルマ」みたいに政府の都合で簡単に変えたりはしないのである。そうした日土友好の歴史は、もちろん伝説のエルトゥールル号事件から教科書通りに解説してあるのだが、親日国トルコイメージも、なんだかステレオタイプ化してきた感もある。最近はヨーロッパ意識の高まりからか、「アジア人蔑視」の傾向もあるも言われているがどうだろう。もっともヨーロッパ化のアンチテーゼとして、「日本の様なアジア」と、「中東の様なアジア」の歪んだ意識も、イスラームと西欧世界の軋轢から自由な世界への憧憬も出てくるだろう。いずれにしても、クルド、アルメニア、キプロス、ギリシャ、ブルガリアと「周辺諸国」と問題ありまくりながら、「世俗主義」とか「歴史認識」で己の道は踏み外さないトルコは、日本とっても参考になるところは多々ではなかろうか。外務省的に著者がその辺を意識しているのかどうか分からぬが、中央アジア諸国にも、その「血」が流れていることは十分理解できたが、「汎トルコ主義」は影響力を失いつつあるとのこと。ところで、コーカサスで売り出し中の廣瀬陽子女史とは関係ないですよね。
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■ 東の太陽、西の新月 
2008年02月22日 (金) 02:46 * 編集 *
東の太陽、西の新月―日本・トルコ友好秘話「エルトゥールル号」事件東の太陽、西の新月―日本・トルコ友好秘話「エルトゥールル号」事件
(2007/09)
山田 邦紀、坂本 俊夫 他

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この本のテーマであるエルトゥールル号遭難事件については、もはや「知られざる秘話」というより、「知られ過ぎてる秘話」といった感があるが、それが後の日露戦争、イライラ戦争、そして近年のワールドカップといった「戦争」の節目で一服の清涼剤として顔を出す「親日国トルコ」イメージの嚆矢であったことを考えれば、「反日」系出版社の現代書館から出るのも不思議な感じがする。著者は「日刊ゲンダイ」に創刊から参加してきた人らしいが、現代書館とゲンダイって関係あったのかな。たしかに、方法論が違うだけで、どちらも思想信条は同じではあるけど。この話が、今や「ウヨク」のバイブルみたいになっている『坂の上の雲』にも登場していたことは、すっかり忘れていたのだけど、遭難事件の前にコレラ事件があったり、救助に当たった医者が自殺未遂したりなんてエピソードは単純化される悲劇と美談の中の「秘話」ではあろう。、その点、ゲンダイらしいのは野田正太郎が帰国後に起こした放蕩と詐偽事件もしっかり書いていること。エルトゥールル号は「親日トルコ」だけではなく、日本人イスラーム教徒の嚆矢ともなっている訳だが、多くの資料で野田が帰国後、ほどなく死亡したとされているのは、実のところ、トルコが評価しているのは日本人の救援活動より、極東の島国にイスラームの種を蒔いたことにあるのではないかという疑いも出てくる。イラン・イラク戦争時のトルコ航空の救援活動、その恩返しスパイラルとしてのトルコ地震救援活動などは十分、感動的ではあるのだが、なんかゲンダイ書館っぽくない。そんなものはSAPIOあたりに任せておけばよいのだが、トルコ留学生が日本に来て一番生きたいところは串本であるというのもなんだか。ゲンダイがトルコ人留学生の要望に応えて看板記事の「看板」を挿げ替えた「秘話」もあるだろうに。
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■ 怪獣記 
2007年12月12日 (水) 23:24 * 編集 *
怪獣記怪獣記
(2007/07/18)
高野 秀行

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大量読書の弊害なのか、本を読んで面白くて笑うなどということは、ほとんどなくなってしまったのだが、この人の書くものはいつも笑わしてくれる。トルコのワン湖で目撃されたという未知動物を追うという話なのだけど、「小説現代」の連載に収まりきれず、書き下ろしということになったらしい。話自体はB級そのものだし、大スクープがあった訳でもなかった訳でもないという玉虫色の結果なので、本来なら東スポ行きの記事なのだが、それを280ページも読ませくれるのは、著者の力量なのだろう。なんでも『アヘン王国潜入記』は英訳され、世界的にも高い評価を受けているとのことだが、最近はだんだんとエンターテイメントの方向に向かっている様な気がしないでもない。もっともこの国で「作家」として生きていこうと思ったら、「仕事」を選んでは行けないのだが、落合信彦みたいな「国際ジャーナリスト」の道に進まなかったのも、川口浩に憧れていたという少年時代の夢を貫徹したということなのかもしれない。京大探検部から早大探検部へと時代が変ったと言えば分かりやすいが、かつては国の期待を背負って学術的に研鑽するといったイメージだった「探検」は、川口探検隊で育った子どもたちが成長し、海外調査の敷居も低くなかった結果、すっかり「探検もの」というイロモノに組み入れられてしまった感もある。地球上に隈なく人類の足跡が及んだことで「未知動物」や「未知民族」が新たに発見される可能性はほとんどない以上、そこにロマンを求めるには照れ隠しも必要なのであろう。
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■ トルコ民族の世界史 
2007年09月17日 (月) 11:07 * 編集 *
トルコ民族の世界史 トルコ民族の世界史
坂本 勉 (2006/04)
慶應義塾大学出版会

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慶應の先生(諭吉ではないが)が書いた本だが、完全に教科書だった。各章の最後にポイントが出ていて、最後の文献案内は18ページもあり、このテーマの日本語文献を全て網羅しているのではないかと思うくらい。絶版になった10年前の講談社現代新書を加筆し、通信教育のテキストとして改変したものらしい。通教のテキストが2800円もするのは高いと思うが、こんな内容なら、私もいっちょレポートを書いてみたいもんだ。しかし、それにしてもトルコ民族の定義は多種多様なのでよく分からん。パン・トルコ主義の動きについてはトルコ一国のナショナリズムに影響されたものかと思いきや、旧ソ連の支配下にあったトルコ系民族も熱烈な信奉者となっていたらしい。アゼルバイジャンに関してはイラン系の民族かと勘違いしていたのだが、元々トルコ系で、ペルシャ文化に影響されたものらしい。アゼルバイジャン人はイラン領内にも相当な数がいるのだが、言語、宗派、文化を共有している以上、トルコよりイランに近しいものを感じるのは当然だろう。ただ、アゼルバイジャンにもパン・トルコ主義に傾く者もおり、アゼルバイジャン・ナショナリズムの嚆矢がアゼルバイジャン・トルコ語運動にあることもあって、イランからの独立運動の火種は消えないらしい。イランとトルコの関係もまた微妙なところがあって、文化的優越感を持つイランと、周辺を支配したオスマン・トルコ帝国の歴史を持つトルコ、更に反米を堅持するイランとEU加盟が命題のトルコという現在の対照的姿。スンナ派とシーア派という対象も加えれば、この隣国関係も複雑なものがある。日本と中国の関係に似ていないこともないが、そうなると間に挟まれたイラクは北朝鮮みたいなものか。そのアラブとの関係性はあまり説明がなく、アナトリア・ナショナリズムやクルドとの関係が詳しく取り上げられている。文化のペルシャに対抗してオスマントルコ文化を花盛せ、アラブ起源の宗教を東欧にまで拡散させたトルコだが、脱亜入欧に傾きながら、パン・トルコ主義も捨てきれないのは、アジアもヨーロッパも双方の遺伝子を受け継いでしまった現在のトルコ人の宿命なのだろうか。
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■ イスタンブル 
2006年09月21日 (木) 22:02 * 編集 *
イスタンブル―歴史と現代の光と影
長場 紘
慶應義塾大学出版会 (2005/09)


「イスタンブール」ではなく「イスタンブル」。そうこれはトルコ研究の第一人者によるイスタンブル案内。名所旧跡は完全網羅してるんじゃないかと思うくらいの量だが、トピックは短く簡潔で、由来をただ並べただけの味気ない説明ではないので、結構読める。じっくり街歩きしたい人は必携であろう。ホテル物語や、島めぐり、オリエント急行なんかも取り上げているが、観光話とは一線を画しているので有り難い。その中で異色なのが、「スパスィーバ!イスタンブル」という章で、文字通り、イスタンブルにおける白系ロシア人たちを取り上げている。革命後オスマントルコに逃れた白系ロシア人は50万人にものぼるとのこと。最終的にイスタンブルに永住したのはその十分の一くらいらしい。トルコ系ロシア人はよく聞くが、ロシア系トルコ人というのも決して珍しくはなさそうだ。そう言えばソ連崩壊後もロシア人が大挙してイスタンブルに買い出しに来ていた時期があった。その中には古典的職業に投ずる女性たちの一群があったと聞くが、白系ロシア人女性の時と同様、「プライド」は重視したのだろうか。関係ないけど「とんでイスターンブウウルー」というのはホント語感だけで使われた歌詞だったんだね。まあ現「ソープランド」みたいに抗議され、改名を迫られる質のものではなかったけど。
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■ トルコの旅
2006年04月30日 (日) 01:39 * 編集 *
トルコの旅―歴史と生きる人と街
矢野 純一 田沼 武能
NTT出版 (2005/03)
売り上げランキング: 606,374


世界四大中華思想の国の一つである大国で、「親日国」ということになっていて、日本人観光客もワンサカというトルコの本は、なぜかあまり縁がない。隣国イラクはもちろん、「身内」のクルドにまで大差をつけられているのは変。という訳で、こんな本も読んでみたのだが、よくある旅本を装った観光PR本。例によって写真がメインなのだが、著者の田沼氏はこども写真の大御所だ。最近では誤解を生じるジャンルだが、長年「つぶらな瞳」でやってきた氏には迷惑な話だろう。文を書いている人は元「朝ジャ」記者で、現在はフリー・ジャーナリストということだが、代表作は田沼氏の解説文ばかりという人で、NTTかトルコ観光局の依頼か分からぬが、田沼氏の指名によるものだろう。で、驚くのは二人とも1920年代の生まれということ。このことはトルコでは大きな意味を持つと思うが、観光客お膳立ての取材旅行では、大した恩恵はなかった模様。最後に船着場のサバ・サンドが政府によって廃止されたと書かれているが、マジかよ。これでトルコへの旅を取り止める人が出たら逆効果ではないか。そんなのは私ぐらいかもしれんけど。
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■ 犬と三日月
2005年05月24日 (火) 02:05 * 編集 *
犬と三日月―イスタンブールの七年
加瀬 由美子
新宿書房 (2002/05)
売り上げランキング: 301,452
通常2〜3日以内に発送


熟年からのイスタンブール移住に挑んだ女性の記録。やはり日本食レストランを始めるのだが、かなりうまくいった方のケースと言える。ただ、このタイトルは現地で絶対的多数を占めるムスリムに誤解を与えかねず、いただけない。
★★

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