![]() | 父さんの銃 (2007/06) ヒネル・サレーム 商品詳細を見る |
フランス在住クルド人映画監督の自伝的小説とのこと。70年代、フセイン政権誕生前後のイラク北部クルド地区での少年時代を綴っているのだが、日常の中に「戦い」があるというのはこういうことなんだろうとは思った。しかし、民族という大儀と、分断を固定化してしまう様な陣取り合戦の矛盾は、関係各国の介入の口実に利用される結果になってしまっており、精神的な統治装置である「民族」は、権力的な統治装置である「国家」に勝るものではないという結論の証左にもなろう。その戦いがどれだけ「正義」に基づくものであっても、その「正義」が絶対的普遍になることは難しい。「正義」が「平和」の仮面を被ってしまうこと自体が矛盾であることは自覚せねばならない。その意味では、14歳で祖国を脱出し、イタリアで絵を描きながら、フランスで映画監督になった著者の後半生の方が興味があるのだが、著者としては手に入れた「平和」と、少年時代に渇望していた「平和」との落差の穴を埋めるような仕事なのかもしれない。









