世界読書旅
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■ ヒマラヤにかける橋
2008年07月01日 (火) 02:05 * 編集 *
ヒマラヤにかける橋ヒマラヤにかける橋
(2007/04/01)
根深 誠

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文字通り、ネパールの山中に橋をつくるという話で、みすずっぽくない本なのであるが、中身も「感動ボランティアもの」とは、ちょっと違うもの。前に竹中工務店の社員がネパールに学校を作る本を読んで、実践編としては役に立つだろうなどと書いた記憶があるが、この山岳文筆家を生業としている著者も、その実践は「感動」とは、ほど遠いものだということを知らしめてくれる。いきおい、愚痴と挫折がメインになってしまい、「本職」のトレッキング話で埋め合わせはしているものの、これを読むとネパールに援助などしない方が良いのではないかと思う人が多いだろうから、逆効果といえば逆効果だ。援助の本質を考えれば、こういった本は百害あって一利くらいしかないかもしれないが、読書的には、青臭い偽善大会の話を聞かされるよりは百倍マシというもの。ネパール人のいう「パワーを見せつけてるんですよ」という言葉には感心したが、それも世間が「他者」で構成されている多民族、階層社会の宿命なのだろう。日本のお役所仕事は、最近の年金問題などで、大層評判が悪かったりするのだが、世界的にみれば、例外的に「機能している」役所を持つ国ということになるのではなかろうか。たしかに「パワーをみせつける」人は、かつての「お役人様」の時代の名残でいないこともないのだが、公務員が公僕として「世間」に吸収されてしまうと、パワーを見せ付ける理由も必要もない。世界的にみればネパールの役所が特殊なのではなく、日本の役所が特殊なのだ。かといって、日本大使館の事務方を融通が利かないと非難するのは筋違いではないか。「草の根資金援助」も国民の血税を使っている以上、大使のポケットマネーと同列に考えていることには納得がいかない。ただ、著者も病気になったり、借金を背負ったり大変だったことはたしかな様で、この本の印税をアテにしたり、冬中夏草の輸入を試みたりなんてことも、あとがきに記している。少なくとも印税を寄付するために新風や文芸から本を出すなんていう矛盾はない。そう言わずに、経済効果も算出して、「援助」から「投資」へと脱却することが、今後は求められるのではなかろうか。
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■ ネパール王制解体 
2008年05月07日 (水) 01:24 * 編集 *
ネパール王制解体―国王と民衆の確執が生んだマオイスト (NHKブックス 1075)ネパール王制解体―国王と民衆の確執が生んだマオイスト (NHKブックス 1075)
(2007/01)
小倉 清子

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ネパールのマオイストについては常日頃、時計の針を50年くらい戻したような話だなとは思っていたのだが、それを生んだ土壌に「貧困」という下地があったことは間違いないにしても、そうした単純な理解では済まされない複雑怪奇な事情があることが、この本を読むと分かる。その意味ではマオイストについての最良のテキストであるとは思うが、とにかく「複雑怪奇」なので、観光ネパールしか知らない素人はちょっと混乱してしまった。例によって、ギャネンドラ国王を「内政干渉」せずに支える中国は、マオイストについて、「毛沢東の名を汚している」などと非難している様だが、そのイデオローグは毛沢東主義というより、センドロ・ルミノーソ(著者はシャイニング・パスと表記)に感化されたものらしい。もっとも「ゴンザロ大統領」は中国で訓練を受けた経験がある訳だし、道路建設(中尼公路か?)でネパールに来た「中国人労働者」がネパール語の「赤い小さな本」を大量に配っていった(これも70年代中国のスタンダードだが)というから、タネは中国が蒔いたということは間違いない。なんでも今やインドにもマオイストが登場しているというから、そのうち農民暴動が頻発している中国にも、マオイストが逆輸入されるなんてことにもなりかねんだろう。それにしても、センドロがグスマン逮捕後、ほぼ自壊したのに対し、ネパールのマオイストが政権奪取まで窺う影響力を保っていることには驚かされる。そこがネパールの「複雑怪奇」な事情によるものなのだが、記憶に新しい宮廷クーデターからも分かる様に、王室内部の対立が深刻で、「ロイヤル・マオイスト」という勢力が鍵を握っていたりするのだから、天皇制内共産主義を容認したという三島由紀夫もビックリである。マオイストの民族構成にも特徴がある様で、宗教を否定したマオイストにも擬似階層的ヒエラルキーが存在するらしい。著者は副題を「国王と民衆の確執が生んだマオイスト」としているが、この本を読むと、たしかに単純な「差別と貧困が生んだマオイスト」と言い切れないことが分かる。国内に深刻な格差を抱え、権力が脆弱な多民族国家は今後、マオイストを生む土壌があると言えよう。
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■ ヒマラヤに学校を建てよう!
2005年10月06日 (木) 08:14 * 編集 *
4395007724ヒマラヤに学校を建てよう!―建築家のボランティア奮闘記
AAF

彰国社 2005-03
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このAAFというのは竹中工務店大阪本店勤務の有志によって結成されたボランティア団体で、そのネパールの山奥で学校を建てる活動をまとめたのがこの本。となると企業メセナに聞こえるが、あくまでも社員有志が主体となっており、計画から資金調達、そして専門である建設とメンバーが、有給休暇などを使いながら、現地に乗り込んで完成にこぎつけたらしい。しかし、その事よりもこの本が優れていると思うのは、非常に実用的であるという点だ。こうしたNGOはネパールだけでも山ほどあり、その功績が美辞麗句と共に讃えられる事は多いが、この本の様に、実際に遭遇する理想と現実のギャップに言及される事は少ない。それも、こうした団体の多くが、大なり小なり「募金」に頼っている以上、ネガティブ・イメージとなる要素は極力排除されるからであろう。この本でもそうした事例が紹介されているが、実際問題、こうしたNGOに必要なのは「カネ」であって、金銭を伴わない「顔の見える貢献」は邪魔なだけである。「愛は地球を救う」とは要するに「同情するならカネ出しな」という事なのだが、それは違うと思って、理想に沿った形で自分で始めると、この本に書かれている様な不信も挫折も味わう事となる。それを乗り越えれば、素晴らしい感動が待っていようが、映画の様にそこで幕という訳にはいかない。むしろそれが新たな戦いの始まりである。それでも初期の純粋な理想を維持し続けられるか、もしくは完全に開き直れるか、そこに勝負の分かれ目があるのだ。
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■ ネパールに生きる
2005年09月01日 (木) 02:25 * 編集 *
オススメ!
4787704125ネパールに生きる―揺れる王国の人びと
八木澤 高明

新泉社 2004-12
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久々に非常に感心した秀作ルポ。カメラマンとしてネパールに通いつめていた著者は、ある日、勧められてネパール人女性とお見合いをして結婚し、山村で暮らしはじめる。こんな話から始まり、今や最大の危機となったマオイスト問題に、児童労働、王宮クーデター、グルカ兵、アウトカースト、エイズ、そして東電 OL殺人事件被疑者問題に至るまで、思いつくネパール関連の題材を全て現場の声からフォロー。売春カーストが前近代的問題とすると、現代的問題であるエイズや東電OL殺人事件まで、この国が未だ20世紀に世界が通過してきた道の途上にある事が分かる。読んでいて、まるで20世紀史のおさらいをしている様に感じた。歴史は繰り返されるという事実が如実に表れているのだ。表紙の女性はマオイスト兵士で、二十才で戦死したという。彼女は文革もポルポトも知らなかった。ただ知っていたのは、自分たちの暮らしが貧しいと言う事。そして彼女に教えられたのは、貧しい暮らしを変える為には、武器をとらなくてはならないという事だけだった。ああ...
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■ ヒマラヤの「正倉院」
2005年07月06日 (水) 02:58 * 編集 *
4634491508ヒマラヤの「正倉院」―カトマンズ盆地の今
石井 溥

山川出版社 2003-05
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副題は「カトマンズ盆地の今」ということで、当地に住む人々の文化、歴史、生活を豊富な写真とともに解説。古くからカトマンズ盆地の主流民族だったネワールの変遷など、興味深い記述もあるが、翻訳した百科事典を読まされている様な、民俗学的な事実を羅列した調子の文章は読みづらい。共著者となっているカメラマンの写真は素晴らしく、本文とは別に写真にも解説が付いているので、写真集として眺めるだけでも良いかも。
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■ ヒマラヤ超大型カメラ人情撮影紀行
2005年06月26日 (日) 12:31 * 編集 *
4062111683ヒマラヤ超大型カメラ人情撮影紀行
内野 克美

講談社 2002-02
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タイトル通りカメラマンの撮影記であって、仕事の本体は別売りの写真集らしい。この本はその派生品の旅行記なので、ちょっ気になった箇所を一つだけ挙げる。著者はスペイン人からネパール人に間違われて憤慨し、「俺は日本人だ」というとエコノミックアニマルという言葉が聞こえて来た。それで白人は自分達が偉い人間だと思っていて、アジア人を見下しているのだろうという結論。ここではなぜネパール人に間違われ憤慨するのか、何故スペイン人数人の差別的な態度を以って、その様な単純な結論に至るのかといった問題はさておき、このスペイン人が発したという言葉をそのままタイトルにしたエコノミックアニマルは褒め言葉だったという本を読んで、パキスタンのブット首相(女性の元首相の父の方)に端を発するこの言葉が、決して侮蔑的な意味ではなかった事を確認したからである。詳しくはこの本を参照して貰うとして、前から疑問に思っていたのだが、外国人でこんな言葉を使う人には会った事がない。ましてスペイン人が発したのはスペイン語であろうから、animar(活気がある)辺りを誤解したのではないだろうか。こちらもむしろ褒め言葉である。正に無知の涙だ。この様な誤解から、偏見や逆差別が生まれて来るのかと考えると恐ろしい。
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■ 牡牛と信号
2005年06月12日 (日) 20:07 * 編集 *
オススメ!
4921146608牡牛と信号―“物語”としてのネパール
山本 真弓

春風社 2002-11
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大使館の在外調査員滞在記だが、意外と面白い秀作。かなり深い理解を目指している事が分かる。
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■ 開発援助か社会運動か
2005年05月28日 (土) 02:40 * 編集 *
開発援助か社会運動か―現場から問い直すNGOの存在意義
定松 栄一
コモンズ (2002/11)
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国連職員として滞在した著者のネパールの社会調査。タイトルとなった疑問の結論は出ず。


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