世界読書旅
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■ ピノチェト将軍の信じがたく終りなき裁判 
2008年01月30日 (水) 19:03 * 編集 *
ピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判―もうひとつの9・11を凝視するピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判―もうひとつの9・11を凝視する
(2006/09)
アリエル ドルフマン

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この著者の本は前にも一冊読んでいた様だが、アルゼンチン生まれのチリ国籍で米国育ちのユダヤ人というややこしい経歴の文学者。父君がアルゼンチンの軍事政権に迫害されて、アメリカに移ってみたら、今度はマッカーシーズムの時代になって、チリに移住し、本人は「帝国主義の言葉」である英語を捨てて、今後はスペイン語だけを使う決意を固めるものの、今度も軍事クーデターでチリを追われ、ヨーロッパを経て、再びアメリカで英語を糧に暮らしているという。まあ英語が帝国主義だからスペイン語ということに根本的な矛盾を感じないところに「階級闘争」ではなく、教義としての「社会主義」を実践してきた知識人らしいものを感じるが、「たまたま」国外に脱出できた者のひけめも、またピノチェト追求に積極的にならざるを得ない理由であろう。この問題が著者の様な国外組と、国内組の間には微妙な温度差があることも、その辺りに理由を求められるかもしれない。世界初の民主的選挙によって誕生したと言われるアジェンデ政権が、民衆の期待に十分に応えることが出来ず、労働者も、富裕層も敵に回して、中産階級のインテリという限られた支持基盤に依拠してしまったことは、ラテンアメリカにおけるポピュリズム政治を軽視したことにとる失敗とも言える。その意味では現在のラ米新左派潮流の代表格であるベネズエラのチャべスも、ブラジルのルーラもタイプは異なるが、アジェンデの失敗を反面教師にしている節があり、アジェンデが30年早かったとしても、CIAに援護された右派軍人による左派政権打倒という構図に収めることはできない。著者の様な国外組が、反帝国主義の言説に基づいて単純化するのも、知人友人が遭った悲劇のトラウマが関係しているのであろう。「被害者の記憶」が再生産されことによる弊害は、「悲劇」の重みを突きつけることによって、沈黙と哀悼を強制するのだが、「遺族」の悲しみと「歴史」に整合性をつけるのが、ポスト・アパルトヘイト以降、各地の紛争でモデルケースとなっている「真実と和解委員会」という試みなのであろう。スペインやイギリスが果たしてピノチェトを裁く権利があったかという問題は結局、整合性が曖昧になってしまい、チリもまた結論を留保したままピノチェトは死の床についた。結局、「歴史」を裁くことは出来なかったということである。
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■ チリの闇
2005年05月18日 (水) 01:15 * 編集 *
チリの闇―行方不明者を持った家族の証言
中王子 聖
彩流社 (2005/03)
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通常2〜3日以内に発送



名前は少女マンガの主人公の様だが、なかなか硬派な著者による、アジェンデ政権追放後の白色テロにおけるチリ行方不明者家族の証言集。精神医学と精神分析学の研究をしているという著者は元々、証言集だけにしたかった様だが、それだけじゃ分からんだろ、という出版社の求めに応じて、チリ小史(先史時代から現在まで)を追加。最近のピノチェト逮捕騒動や9.11(1973年の同じ日にアジェンデ政権追放のクーデターぼっ発)ですっかり忘れられていた「世界で初めての民主的選挙による社会主義政権」がささやかなスポットが浴びる事になったが、その光と影について背景をおさらいするのに役立った。証言集については「行方不明者家族の会」のメンバーに依っており、我が国の「拉致、特定失踪者」の家族会との対比を想起させられる。個人的に、この問題はガルシア・マルケスの戒厳令下チリ潜入記とミゲル・リティンによる同名映画(映画の方が原作)に感動したのが、ひたすら海外実情ものを読み続ける契機になった事もあり、感慨深いものがある。
★★
# * チリ * Comment (0) * Trackback (0) *
■ 世界で最も乾いた土地
2005年05月16日 (月) 23:54 * 編集 *
>世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶
4152086203アリエル・ドーフマン

早川書房 2005-02
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著者はアルゼンチン生まれのチリ国籍。現在はアメリカで大学教授の傍ら劇作家としても有名だそうだ。邦題はおそらく話題になったドキュメンタリー番組からパクったと思うが、原題は"Desert Memories"で、著者は英語作家である。舞台となっているチリ北部アタカマ砂漠一帯は、タイトル通り世界で最も降水量が少ない地域である。著者はその不毛の砂漠を黄金の海に変えた硝石鉱山へ、それが果てるとともに砂漠に沈むゴーストタウンへと旅をする。チリの文学作品と言えば、アジェンデ追放の 1973年の「9.11」は避けられないテーマとなっているが、この本でもその例に漏れず、著者はこの地の「死の収容所」に送られた友人の足跡を追う。旅行記ではあるが、ラテンアメリカ文学特有の「魔術的リアリズム」に満ちた素材が、紙上ではこの朽ち果てた砂漠を再び黄金の海に変えている。蜃気楼の様に現れ、消えた「売春町」の話や、「死の収容所」が観光ホテルに転用され、そこの子どもの名がピノチェトと同じ「アウグスト」だったとか、劇作家として押さえるツボを掴んでいる感じがした。
☆☆
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