2009年06月30日Tue [01:26] アルメニア | 本・雑誌 |読書メモ  

アルメニアを知るための65章

アルメニアを知るための65章 エリア・スタディーズアルメニアを知るための65章 エリア・スタディーズ
中島 偉晴

明石書店 2009-05-26
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「知るための」はアルメニアをコーカサスから独立させたか。編者の人は前に明石からアルメニア人ジェノサイドの本を出してるが、相変わらずの親アルメニア路線。アルメニアというと、ジェノサイドより、世界最強の美人国と日本では知られているのだが、どうも編者はそのアルメニア美人を嫁さんに貰ったらしい。となると、アルメニア贔屓も必然的なものか。とはいえ、1980年からアルメニアを訪問し出し、1984年には日本アルメニア研究所を設立したというから年季が入っている。ドイツ人にも熱心な南京応援団がいて、中国政府肝入りの映画を作ったそうだが、トルコ人からみて、アルメニア人の肩を持つ日本人というのはそんな感じだろうか。前の本もそうだったが、ロシア語読みとかは徹底排除する方針の様で、トルコも「テュルク」で統一。他の執筆者には日本語の「トルコ」を使っていた人も少なからずいたと思うのだが、それも一律に「テュルク」に変換。なんかそれもファシスト的な感じではあるのだが。とにかく「テュルク」は悪魔化されており、それが事実としても、アルメニア人の被害ばかりを一方的に綴るのはどうなのかな。グルジア人やアゼルバイジャン人、ロシア人からも虐殺を受けてきたそうだが、アルメニア人の報復虐殺については一切言及無し。このシリーズもコーカサス全体の時はバランスが保たれていたが、一国一冊になると、やはり応援団が幅を利かす。しかし、トルコ編はまだ出ていないのか。アルメニア人は強力な在外コミュニティがあるから、宣伝戦は強い。まあ日本人にとっては親日か美人かどっちを選ぶかといったところだけど。数多い在外アルメニア系有名人の中で、サッカー代表はまだジョルカエフか。彼はたしかどっかとのハーフだったと思うけど、通はハシェミアンとかボゴシアンを選ぶね。合点がいったのはアルメニア人の心からのもてなしは驚かされるが、ロシア関係者が「ヤマト風大ロシア主義」的な態度をとる人には機会がないかもしれないという記述。何て分かりやすい説明だ。結構日本人には「ヤマト風大中華主義」とか、「ヤマト風大アメリカ主義」といった態度をその国に虐げられている国でとる人がいるんだよね。それでもアルメニア人はロシアはトルコよりマシといった認識の様だ。「世界四大料理」のトルコ料理も実はアルメニア料理が起源といった、どこかの国とそっくりな言説もあった。

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アルメニア共和国の建築と風土―Out of the Frameアルメニア共和国の建築と風土―Out of the Frame
篠野 志郎

彩流社 2007-11
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著者はキリスト教建築を専門としている人らしい。ということで、タイトル通りの写真集+散文といった体裁なのだが、写真家でもない一研究者のアルメニアの古ぼけた教会の写真集を出版してくれる奇特な出版社はなかなか見つからなかったとのこと。彩流社がある意味奇特であることは万人が認めるところだと思うが、ならば勝手にやってくれということなのか、「写真家でもない一研究者」の著者が、レイアウトから装丁まで全て自分でやったらしい。「手作り」のアルバムの雰囲気を出したかったということで、その点は「成功」しているのだろうが、この版型で縦書き、字がぎっしりだと異様に読みにくい。写真はは「玄人はだし」ってヤツなんだろうが、たしかに崩壊寸前の教会の写真は、工場とか病院に萌える廃墟系の人たちの趣味ともちょっと違うだろう。アルメニアの教会は街から外れた僻地に建てられているとは知らなかったが、教会がコミュニティの中心ではなく、あくまでも霊的なものだとすれば、それも当然だろう。もっとも、領主が自分の土地に建てたからというのがホントのところらしい。また、アルメニアが世界最強の美人国であるということが最近定着してきているが、女は子どもと老婆しか写っていない。とはいえ、そこに教会があるからというよりも、そこに酒があって女があるというのが、著者がアルメニアに惹かれた理由でもある様な感じもする。研究者として、それではイカンということになったのか分からんが、研究対象のベクトルをアルメニアからトルコへ移したのこと。よりよってトルコでは、アルメニア人に対する「裏切り」なのだが、この本は著者なりの別れた人に対するラブレターなのかもしれない。

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2007年10月03日Wed [21:32] アルメニア | 本・雑誌 |読書メモ  

アルメニア人ジェノサイド 

アルメニア人ジェノサイド―民族4000年の歴史と文化 アルメニア人ジェノサイド―民族4000年の歴史と文化
中島 偉晴 (2007/04)
明石書店

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このテーマについてはフランスやアメリカといった大規模なアルメニア人コミュニティを抱えるところでは、「悲劇の遺産」としてかなり政治問題化されているところがあって、「南京大虐殺」と同じ構図があるのだが、トルコは国を挙げて「まぼろし説」を掲げているというから、相当な筋金入りだ。その理由はケマル・パシャの建国神話とも関係しているところもある様だが、「虐殺」を認めた国外在住の作家を国が名誉毀損で起訴したというから徹底している。日本で言えば大江健三郎を国が訴える様なものだろうか。フランスではアルメニア人ロビーにより、ジェノサイド決議に持ち込むことを成功させているのだが、それによって国際的同情を勝ち得たとはとても言い難い状況だ。この辺もアメリカの「従軍慰安婦決議」と似た構造があるのだが、いずれにしても第三国で起こったことを第三国議会が非難決議したところで、その当事国以外には関心を持たれることはないということであり、そこに「政治的動議」という逆効果以上のものが生まれることはない。「ホロコースト」という「財産」を得たユダヤ人は自身の「財産」と競合するものを排除するという姿勢の様だし、ヒロシマ・ナガサキの「成功」も米国という加害者とそれを民族主義動機によって糾弾せず、「平和」を旗印にした日本という構図があるからだろう。「日本アルメニア研究所」を主宰している著者もまた「民族主義的動機」の色合いが強い。著者のこだわりらしいが、「テュルク」「テュルキイェ」表記と使い分けは、日本語で読むと、どこか架空の国が起こしたことの様にも感じてしまう。100年近く前の悲劇を以って現代のアルメニア人に同情せねばならぬ切実な理由は日本人にも、どこの国にもなかろう。中国や韓国がバーターで取引するかもしれないが、トルコとアルメニアを天秤にかけることは、日本と中国を天秤にかけるより結論が明らかであるという事情もある。やはりユダヤ人の「成功モデル」というものはそう簡単に真似できるものではないという気もするのであった。

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