![]() | エチオピアを知るための50章 (エリア・スタディーズ 68) (2007/12) 岡倉 登志 商品詳細を見る |
恐ろしく平均値が高い「知るための」シリーズだが、これはその中でも、上位に位置する完璧な出来だと思う。もっとも、エチオピア本自体が少ないから、入門書でも概説本でも即戦力という事情はあるのだが、それはアフリカや黒人世界における、エチオピアの存在感を考えると不当な扱いと言わざるをえない。とはいえ、古くは皇族と日本人女性結婚話や、走る哲学者アベベ・ビキラなどで、日本でも御馴染みの国なのだが、「エチオピア饅頭」というものは初耳だった。イタリアとの戦争において、日本の世論がエチオピア応援で盛り上がったとは、その後の歴史を考えると複雑なものがあるのだが、日本とエチオピアが結びつくことは、列強にとって危惧すべきことだったのだろう。そう考えると、日本がムッソリーニやヒットラーと組まされたのも、黒人運動を抑えたいアメリカの陰謀の様な気もしてくるのだが、キリスト教、ユダヤ教、アメリカの黒人運動、パン・アフリカ運動、アフリカの年、革命、社会主義、冷戦、内戦、飢餓、これほどあらゆる国際情勢のキーワードが詰まった国というのも珍しい。イスラエルのソロモン作戦なんてのもあったが、ライブエイドとかもユダヤが絡んでいたそうな感じもする。少なくとも、エチオピアが古いキリスト教の国ということで、あの運動が盛り上がったことは間違いなかろう。白人、黒人双方にとっても、エチオピア人というのは、他のアフリカ人より美的に映るということもあるのだろう。イタリアはエチオピアが貴族が奴隷を支配する国であるというプロパガンダを張って、その侵攻を正当化したそうだが、これはどっかの国と同じだな。まあ、「侵攻」も「解放」も、その土地の人間にしてみれば、本質的には同じものということなのだけど。そんな感じで、国際政治フェチにとっては、やたら勉強になることが満載なんだけど、ずっと気になってた編者と岡倉古志郎の関係が、岡倉天心の曾孫と孫だったとは、不覚にも全く知らなかった。そんなこと小谷野敦の本にも出てなかったぞ。ありがとうエチオピア。






