世界読書旅
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■ エチオピアを知るための50章 
2008年04月29日 (火) 09:51 * 編集 *
エチオピアを知るための50章 (エリア・スタディーズ 68)エチオピアを知るための50章 (エリア・スタディーズ 68)
(2007/12)
岡倉 登志

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恐ろしく平均値が高い「知るための」シリーズだが、これはその中でも、上位に位置する完璧な出来だと思う。もっとも、エチオピア本自体が少ないから、入門書でも概説本でも即戦力という事情はあるのだが、それはアフリカや黒人世界における、エチオピアの存在感を考えると不当な扱いと言わざるをえない。とはいえ、古くは皇族と日本人女性結婚話や、走る哲学者アベベ・ビキラなどで、日本でも御馴染みの国なのだが、「エチオピア饅頭」というものは初耳だった。イタリアとの戦争において、日本の世論がエチオピア応援で盛り上がったとは、その後の歴史を考えると複雑なものがあるのだが、日本とエチオピアが結びつくことは、列強にとって危惧すべきことだったのだろう。そう考えると、日本がムッソリーニやヒットラーと組まされたのも、黒人運動を抑えたいアメリカの陰謀の様な気もしてくるのだが、キリスト教、ユダヤ教、アメリカの黒人運動、パン・アフリカ運動、アフリカの年、革命、社会主義、冷戦、内戦、飢餓、これほどあらゆる国際情勢のキーワードが詰まった国というのも珍しい。イスラエルのソロモン作戦なんてのもあったが、ライブエイドとかもユダヤが絡んでいたそうな感じもする。少なくとも、エチオピアが古いキリスト教の国ということで、あの運動が盛り上がったことは間違いなかろう。白人、黒人双方にとっても、エチオピア人というのは、他のアフリカ人より美的に映るということもあるのだろう。イタリアはエチオピアが貴族が奴隷を支配する国であるというプロパガンダを張って、その侵攻を正当化したそうだが、これはどっかの国と同じだな。まあ、「侵攻」も「解放」も、その土地の人間にしてみれば、本質的には同じものということなのだけど。そんな感じで、国際政治フェチにとっては、やたら勉強になることが満載なんだけど、ずっと気になってた編者と岡倉古志郎の関係が、岡倉天心の曾孫と孫だったとは、不覚にも全く知らなかった。そんなこと小谷野敦の本にも出てなかったぞ。ありがとうエチオピア。
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■ エチオピアのキリスト教 思索の旅 
2007年05月27日 (日) 02:58 * 編集 *
エチオピアのキリスト教―思索の旅 エチオピアのキリスト教―思索の旅
川又 一英 (2005/09)
山川出版社

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タイトル通りの話なのだが、これは著者の没後に発見された遺稿なのだという。享年六十というのは現代(日本)では早すぎる死だが、まさか、このエチオピアの旅での無理がたたったのはあるまいか。フラフラになりながら、「ゴミ箱から拾ってきたようなバス」で2日とかいう道中なんて話も出てきたのでドキッとしてまう。それ以上に著者を悩ませたのが、失業が慢性化している当地において、外国人旅行者を狙う、ガイド、物乞い、たかり、スリ、融通が利かない役人といったエチオピア人たちであった様で、この辺の「悪名」は私のエチオピアへの旅を躊躇させているところでもある。ただ、観光地でガイドを雇うことで、しつこく付きまとう連中から身を守れるなんていう「妥協点」もある様で、「ガイド」が対外人関係ヒエラルキーの上位にいることが分かる。「公認ガイド」は、ほとんど特権階級であって、そのおこぼれを「非公認ガイド」が狙う構造となっているらしい。そうした自称ガイドが警察に連れてかれてしまう話も出てくるが、「無料で親切心から」案内する自称ガイドの話が正しいのか、「外国人を騙そうとしていた」とする警察の話が正しいのか不明だというのは、何か物悲しい。私も似た様な経験がモロッコであるのだが、うるさい野郎が連れて行かれて、最初はザマアミロとか思ったが、その後で落ち込んでしまったことを思い出した。そこに「裕福」な旅行者である自分と、「ガイド」をするしかない現地人との関係性が重くのしかかる訳だが、一見「親切そうな」韓国人やアメリカ人が、世界最古のキリスト教国家へキリスト教系新興宗派の「布教」に乗り出していることにも、著者の眼は厳しい。しかし、そうした煩悶も東方キリスト教世界にのめりこみ、遂にはギリシャ正教に入信するまでになった著者にとっては、旅のクライマックスであるアクムスの祝祭の現場に立ちえたことで、十分おつりがくるものであったのだろう。全くの門外漢である私にも著者の宗教心が伝わってくる。早すぎた死は残念だが、著者の魂が安心して天に召されたことを祈る。

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