これは珍しいスロバキア本。日本ではずっとチェコのおまけみたいに扱われているのだが、この本は、その固定概念を吹き飛ばす為に書かれた様な感じがする。スロバキアの人口のうち、チェコ人(民族籍)が占める比率はわずか1%(その逆は遥かに多いだろう)とういう数字からも、その辺が窺えるが、現在のスロバキア人対チェコ人感情は離婚した夫婦の「別れたら好きな人」状態なのだという。共産党時代は、チェコの優位性が顕在化していた為、スロバキア人は「道徳的優位性」という、精神勝利法を以って均衡を保っていたらしいが、生来、「恨」も「中華思想」も無縁の国民性なので、今ではチェコ人に対する感情はすこぶる良いのだとか。元々、分離独立の時も、その支持率か過半数を超える事がなかったというから、これも冷戦体制の崩壊とともに溶解していた問題なのかもしれない。同様に対ハンガリーやドイツも悪くはなく、それよりは落ちるが、対ウクライナ、ユダヤも問題になるほどではないのだとか。つまり、民族的共存を果たしてきた他民族とはうまくやっているのだが、ここでの問題はやはりロマということになるらしい。スロバキア人に同調している立場の著者としてはPCのこともあり、苦しい論述となっている。また、ちょっと興味を持ったのは東方正教会とローマカトリックの折衷として誕生したというギリシャ・カトリックという宗派のこと。これを信仰しているのがルシン人という人たちらしい。たしかにこれはあまり知られていない。あと、本題とは関係ないのだが、気になったのは「日本では優先席でも若者がお年寄りに席を譲らない」ということを著者が定説としていること。これは先の「道徳的優位性」の観点からも、在日外国人から常に指摘されるのだが、ほぼ毎日公共交通機関を利用している私にはどうもピンとこない。その逆の光景なら、よく見かけるし、優先席を避けて座るのが一般的傾向だ。一度でも「若者が譲らない」光景を見たら、それが固定観念化するのだろうが、これはどうなんだろう。「道徳的優位性」を誇る国の椅子取りゲームの凄まじさは私も実体験があるのだが。



